葛巻町研修見学会を終えて 
上領園子
 2004年9月13日(月)〜14日(日)クリーンエネルギー先進地と言われる葛巻町へエコ・リサの有志による呼び掛けで9名の参加者を得、探訪の旅に出掛けました。
 葛巻町は岩手県の北部にあり、県北の玄関口といわれている沼宮内駅で新幹線を降ります。そこからバス20分ほどで葛巻町に入ります。日本でただ一つ環境エネルギー政策課のある町です。葛巻町は「新エネルギービジョン」を策定しており、クリーンで循環可能な新エネルギーの導入に積極的に取り組むことを宣言しています。その中でかけがえのない地球のために一人ひとりが出来る事として「天と地と人のめぐみ」を活かす事を町民一体となって推し進める事を誓っています。それは、風力や太陽光、畜産糞尿や水力、豊かな風土・文化を守り育てた人のめぐみを大切にする事を挙げています。そして宣言通りに進められている事を見学出来ました。

風力発電は電源開発(株)100%出資の(株)グリーンパワーくずまきによって葛巻町の年間消費電力の約2倍相当(約5400万kw/h)が発電され、他に町が所有しているエコ・パワーくずまき風力発電(約300万kw/h)があります。どちらも世界で初めてといわれる山の尾根伝いに設置されていました。
 太陽光発電は中学校や福祉施設の空き地に、町の広場や公園の建物の屋根に設置されており、個人宅でも7軒あり、太陽熱温水器利用家庭は60軒もありました。又、道の駅などの外灯や役場前の電光掲示板は風力と太陽光発電の混成でした。
 人より牛の数のほうが多い葛巻町では畜産排泄物の醗酵によりメタンガスを発生させ、そのガスを燃料に発電し、余熱は醗酵槽を暖め醗酵を促すことに使われるなど乳牛200頭の施設のエネルギーを賄っています。水力では中山間地である葛巻町には小さな滝がありその落差を利用した少規模水力発電がなされており、粉引き水車は現役で働いていました。 岩手県は林業の県ですから当然葛巻町も林業が盛んで、間伐材や木の皮、おが屑が大量に出ます、それをペレットにし、ボイラーやストーブの燃料として使われていました。ボイラーは福祉施設やワイン工場の見学施設の暖房に使われており、余熱効果が大きく考えられていたよりも燃料費は少なくて済むという事でした。私たちが訪問した「くずまきアットホーム」は老人介護施設で建物もくずまきの木が使われており暖房がなくても暖かな雰囲気でした。ボイラーで暖められたお湯は床暖房と施設で使われるお湯を供給しているとの事でした。また暖房もやわらかさを感じると施設の担当者の話でした。ストーブはペレット工場の事務所で使われているのをシーズン前でしたが実際に着火して見せてもらいました。煙突が設置されていたから煙突が必要かと問いましたら早く事務所を暖めるために灯油をかけて着火するために臭いが出るのと、消した時にも臭いが出るからで、家庭用のでは煙突はついていないし電気も使わずに着火出来るとの事でした。岩手県ではペレットストーブに5万円の助成をしています。県庁内の応接室にもこのストーブが使われているとの事でした。ペレットは1kg25円で町内に出荷されています。私たちが買う場合は送料込みでkg当り45円ぐらいになるようです。
 廃校を利用した「森と風の学校」では子供たちに環境教育がなされていました。環境教育と言うと堅苦しく響くかもしれませんが子供たちの考えを大切にし、子供たちが自主的に運営していく体制をとっており、東京から移り住んでいるスタッフは活動の場作りをしていると見て取れました。私たちが訪れた時は平日の午後で子供たちはいませんでしたが、介護者に付き添われたご老人達が来ていました。町の人達皆の学校という風に思われているようで「作業など自発的に手伝ってくれる」ともうかがいました。子供たちは役場のバスで送り迎えがされているそうです。親御さん達にも集まってもらえる場所として喫茶店風にしたいと建設中の建物もボランティアの学生さんたちが泥コネや土壁作りをしていました。土壁は50cmほどの長さに切った間伐材を寝かせ泥を挟むといった厚い壁で所々に1升ビンなどの色つきビンが寝かされていて明り取り兼装飾になっていました。学校のトイレも同じような壁でビンのそこが丸いステンドグラスのようでした。様式はバイオトイレで用を足した後におがくずを一握り振り掛けることで臭いも消え、姿も見えなくなりやがて分解されます。考え方や写真で見てバイオトイレが存在することは知っていましたが実物を見るのは初めてでした。子供たちは地域の自然に触れ、伝統工芸なども大人から教わり、自然エネルギーの素晴らしさを知り、きっと葛巻を誇りに思える大人になると思いました。
 見学を通して葛巻町は日本ではないような気がしました。風景もそうですが人が大切にされていると思いました。お会いした方々がとても優しかったことも在りますが介護されているお年寄りが生き生きした表情でした。最初に訪問した「くずまき高原牧場プラトー」では、概要説明を受けている時に別の部屋でカラオケが賑やかでした。それは午前中に「プラトー」で奉仕活動をした老人クラブの方達が、午後から特別に得られる入浴と楽しみの一つでした。労働の後の楽しみですから、ただ遊んでいるのではないという堂々とした雰囲気が感じられました。
自然エネルギーを使い、自然を大切にし、環境を守ることは人をも大切にすることだと思いました。私が最も感心したことは、町行政の横の連絡が密になされていることです。町を見学していてそれを強く感じました。環境エネルギ−推進課の進めることを農政も観光、福祉、教育すべて絡んでいることです。こんなことも良い意味で日本的じゃないと言う思いに至りました。そしてやれば出来るという考えを強くしました。
この見学会が実現できたことの第1はサイサン環境保全基金による助成があったことによります。そして、葛巻町環境エネルギー政策課主事の下天摩様、私たちには見学や移動にどれほどの時間がかかるかなど想像すら出来ませんでした。それを過密スケジュールにはなりましたが、私達の見学したい所や、葛巻町が見てほしいところを巧く組み合わせて見学コースを作ってくださいました。見学当日はご出張でお留守でしたが、代わって近藤課長補佐が同行してくださり、町が関係する施設を御案内していただきました。近藤補佐は、ごみ担当から移動してきたばかりだと仰りながらも、どんな質問にも答えて下さいました。
次に吉見旅行社の桑原様、旅行社として、この旅行から利益が考えられないと判った後も投げ出さず、こんな見学旅行は初めてだからと慣れない交渉などにも適切なアドバイスをしてくださり、出発まで見届けて下さいました。
以上の方々の御蔭様で大変素晴らしい見学研修会が出来ました。深く感謝致します。

 
 
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