「おえかき和尚 うた日記」 書籍判
A5判、縦書き 130頁 定価600円(税別)
 
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カラスのこと    平成九年八月十八日
 二日前の八月十六日、施餓鬼(せがき)法要(ほうよう)のため越谷の寺へ車で向かう時、途中の農面道路沿いで見とめた景色で二句作ってあった。

あおたみちひるぢょうちん  おく  ぼん
青田道昼提灯の送り盆
しびょう く  からす  む    おく  ぼん
死猫喰う烏の向こう送り盆
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十六日には、農村部ではお盆の送(おく)りをする家が多い。午前十一時ごろ、田んぼの中の墓地をめざして、提灯(ちょうちん)をもって歩いてる人がいた。一瞬だったが、お婆さんとその息子さんらしい人の二人であった。
 そして、その直後、私の運転する道路で、車にひかれた猫に烏が群がっていた。私は通りすぎても、バックミラーでその光景を見つづけた。この日は、空はどんよりした曇り空で、提灯(ちょうちん)のぼんやりとした灯りが印象的だった。
 あまりにも凄惨(せいさん)な句なので、何を言われるかと、今日、おそるおそる父に見せたら、後者の猫を喰う烏の句はとても珍しいと評した。
 後日、烏の句を絵にする。斜めの対角線で仏道(ぶつどう)と餓鬼道(がきどう)を意図的に対比した。菩提(ぼだい)を求める心と背中あわせに、悪食(あくじき)の貪り(むさぼ)の欲界(よくかい)を書いてみたくなった。