「おえかき和尚 うた日記」 書籍判
A5判、縦書き 130頁 定価600円(税別)
 
ご希望の方は、
ならいち幸手店、ならいち久喜店で
お買い求め下さい。

柚子のこと    平成九年十二月二日
 桃栗三年柿八年(ももくりさんねんかきはちねん)柚子(ゆず)の大バカなり九年(くねん)、とかいうように、植えてから九年たったくらいでは、柚子はとうてい実がならないというたとえ。私が聞いた中では、二十年かかったという話もある。もっとひどいのは、何年前に植えたか忘れたが、家の年寄りが亡くなった年に、はじめて花が咲いたという例もある。
 いつごろだったか、ホームセンターで柚子苗を二本買って植え、数年たってようやく花が咲いた頃、客殿(きゃくでん)の建築があり、どうしても植えかえが必要となった。
 竹やぶのはじの日あたりよい所に植えたが、一本は枯れてしまった。さらに何年かして残った一本に、昨年、はじめて花が咲いたが、梅雨ごろの強い雨風で青い小さい実がすべて落ちてしまった。
 今年はたくさん実がついたが、夏までにだいぶ落ちてしまい、六つほど残って大きな実になった。もったいなくて、ずーっととらないでいたら、暮れの行事の手伝いにきた職人さんや、植木にくわしい野口さんに、来年のためには木が疲れてしまうので、早く実をとらなくてはいけない、とおしえられた。脚立をもってきてハサミでとり、初物を仏前にお供えした。

クリック
※画像をクリックすると大きな画像で
ご覧になれます
  ゆず むつ はつ       としふきょう
柚子六ツ初なりの年不況かな

 今年は経済が下り坂、有名会社の倒産のニュースがあいつぎ、株も下がりっぱなしで年の瀬をむかえる。うちだけは、ちょっといい事があったと句を作ったが、家人や勤めてる人に、不況の空気があまりにもきびしく、たのしめない句だ、と酷評された。
 晩、忘年会で帰宅が遅くなった家人を、駅まで車で迎えに行ったので、いつもより入浴が遅くなってしまった。
                      はつ       ゆず う           ふかよ
初なりの柚子浮かばせて深夜かな

夜おそく、とった柚子を一つ風呂に浮かべ、ささやかに収穫を祝った。