「おえかき和尚 うた日記」 書籍判
A5判、縦書き 130頁 定価600円(税別)
 
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カスピ海のこと      平成十八年十月二十二日
 裏の庭で、大きな虫くいの柿の葉をひろってきた。

柿の葉やカスピ海に喰われけり

 青い葉の時、ケムシにくわれた形が、カスピ海に思えたのだ。
 おもしろくて、カレンダーを一枚はがして、うらに大きくその柿の葉と句を書き、さらにカラーのデザインペンで赤や黄色、緑と、大胆に色づけをした。そして表の掲示板に貼った。
 遠くの方から、人が通るのをみていたが、絵に目がとまっても、感動もなく、だまって行ってしまう。たまたま、私はそういう人ばかり目にしたのだろうか。
 いく日かたって、お寺に歴史見学で立ち寄ったグループの人が、帰りに掲示板の前で立ち止まり、何かヒソヒソ話している。私をみとめた一人が、おそるおそる近づいて、こう質問した。

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「あの、この句、何だかよく分からないのですが、どうして、ヨーグルトが柿の葉をたべるんですか」
「えーっ、ヨーグルト!」
 しばらく絶句してから、カスピ海はソビエトの方の大きな湖であり、その形にケムシが葉をたべたことを説明した。
 「まぁー、お坊さんて、なんてむずかしいこと、考えるんでしょう」
と、笑いながら足早に立ち去った。
 あとで息子に、今の人はカスピ海を地理で知る人は少ない、ヨーグルトの名前と思う人の方が多いだろうと、おしえられた。