「おえかき和尚 うた日記」 書籍判
A5判、縦書き 130頁 定価600円(税別)
 
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白髪三千丈のこと     平成十九年二月十九日
 庭の古い梅の根本に近い所から、一技でていて花をつけているのを見とめた。この梅は太くなってから植え替えがされており、それ以前のことを考えると、かなり古い木だ。
 太く黒い幹に梅の白い花が点々とあり、俳句を作る時のイメージとして、白髪三千丈の漢詩を思い出した。
梅古木白髪三千丈の夜話

 これまでに、この古木にも語りつくせない一日一日の時を刻む物語があったろう。枝を伸ばした若木の頃、大きくなって実がなり枝の形をととのえられた頃など。
 晩の食事の時、父が「おれの友達は、もう皆いなくなった」と、さびしいことを言う。元気な頃、大活躍し気丈だった父も今年かぞえで米寿、父をささえていた母もすでにこの世にいない。この頃、父は感情をかくさないで話す時がある。

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 私は前の句をさらにシュールに飛躍させて、

鼻毛抜き白髪三千丈の夜話

と作りかえ、メモ用紙に筆ペンで絵も書いて父に見せた。
「おまえは、よく、そんなバカなことを思いつくなぁ」 と、おどろいた様子だった。そばで聞いていた妻も、鼻毛の絵をあきれたように笑った。

※白髪三千丈……李白の「秋浦歌(しゅうほのうた)」愁いによって白髪が九千メートルものびてしまったという、誇調というより、おどけた表現。