「おえかき和尚 うた日記」 書籍判
A5判、縦書き 130頁 定価600円(税別)
 
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ゴリラのこと     平成十九年三月三十日

 テレビを見ていたら上野動物園の桜がうつって、つづいてオリの中のゴリラがうつった。散る桜に年老いたゴリラがやけにさびしく感じた。近くにあった紙に、スケッチと句を書いた。
 日本に来て、あんなオリの中で何年たったのであろうか。もの思うゴリラの視線の先で、桜の花ビラが舞う。故里アフリカのジャングルへの望郷をよむ。

春淋し老いたゴリラの幾星霜

 墨絵を書きあげると、なぜゴリラなのか、どこのゴリラなのかと、周囲のものが問う。そうじゃなくて、さびしさそのものがテーマなんだと説明したが、説明すればするほどさびしい気持ちになる。


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 後日、大型店内になる額屋で墨絵を裏うちしてもらったが、でき上がったのでとりに行くと、店の担当の中国人リュウさんという若い女性が、 「この絵は、すごくわかります」 と言った。
「私も祖国をはなれて何年もたち、いつ帰れるかなあと、さびしくなる時がありますよ」
 私は予期せぬ感動をあじわって、元気がもどった。
※裏うち……掛け軸にしたり額装する時、和紙の原画に別の紙を重ねて補強
すること。