「おえかき和尚 うた日記」 書籍判
A5判、縦書き 130頁 定価600円(税別)
 
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円仁、法然、朴の木のこと     平成十九年五月三十日

 新聞の夕刊のイベント案内で、円仁展が宇都宮で開かれることを知る。そこに、国宝の絵伝「四十八巻伝」が展示されると有った。私は新聞を切り抜きし、いても立ってもいられない思いで出かけられる日を待った。
 近年、私は「絵伝」に興味が高まり、案内の美術書を二〜三買って学んでいたからだ。

 忙しさ中、半日の時間を見つけて車で高速道路をとばし、目的の博物館に着く。入館すると、人並みをかきわけ、円仁関係の仏像や、経本、書にはほとんど時間をかけず、出口近くで、お目当ての「四十八巻伝」のガラスケースの前へ立った。歴史的価値もさることながら、筆の力がきわだっており、巻物の造作も上等だ。国宝に値いする。
絵伝を蔵するご本山知恩院へ行っても、本物はまずお目にかかれない。それが、宇都宮で見られたうれしさ。
 慈覚大師円仁は、千年以上も前に栃木、岩船に生まれ出家し、京にのぼり、入唐もし、天台二祖となった高僧。絵伝の人物、法然上人は八百年前の方、天台で修業し叡山を降り、浄土教の念仏のみを撰び、広められ、今日の浄土宗の祖となられた。晩年。弟子の罪をとわれて四国に流され、赦免後、帰洛し八十才で往生した。


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 上人ご臨終に、円仁の九条袈裟を願い出、床にかけていただく。その場面の巻が展示されていた。大変、印象的な企画ではないか。
 見学後、思いがかなった私は外に出て、ふふぅーっとため息をつき、博物館のある広い公園のベンチに座った。ふと頭上を見上げる周りの背の高い樹々に、所どころ大きな白い花が咲いている。朴の花だ。

円仁を心で旅し朴の花