トンボ・野草研究家の長須房次郎さんが幸手近郊の自然を紹介

写真/文
長須 房次郎
>>プロフィール

>>バックナンバー

No.19 -10月21日更新-
幸手市で見られる帰化植物
〜その3〜
今回は一時、花粉症の原因とさわがれ、公害雑草の汚名をきせられたセイタカアワダチソウと近年急激にふえてきたマメアサガオについて紹介いたします。
※クリックすると大きな画像がご覧になれます
クリック
【セイタカアワダチソウの大群落】
(10月17日行幸湖西岸にて撮影)
《セイタカアワダチソウ》
この時期、野外に出ると道ばたや休耕地、土手などを黄金色に染めた植物の群落に出会います。セイタカアワダチソウウ(背高泡立草)の群落です。
 過日、宮代町で行われた野草観察会で、この草に出会ったとき参加者の中から「これブタクサでしょ!」という声がありました。
「花粉症の敵ブタクサはこれだ」と思い込んでいる人が意外に多いことに驚きました。ブタクサはオオブタクサ(クワモドキ)とともに花粉症の原因植物です。春発芽して、花期は夏です。
   
セイタカアワダチソウ(キク科)の生まれ故郷は北アメリカです。京都大学には大正9年に採取した標本が、九州には戦前に栽培された標本があるので、戦後に帰化したものではないことが分かります(明治30年代に観賞用に導入されたという説もあります)。
 戦後、北九州の炭鉱が石炭不況のため閉山した後のボタ山や裸地に入り込み大群落を作ったのが、日本での大繁殖のはじめです。当時炭鉱で働く人々は「閉山草」と呼んでいたといいます。
 ゴールデン・ロット(黄金の鞭)と呼ばれるように、黄色の舌状花をもつ頭花は大きな大きな円錐状につき、草丈はふつう2メートル以上になりますが、河川など肥沃な土壌条件では4メートルにもなります。
※クリックすると大きな画像がご覧になれます
クリック
【セイタカアワダチソウの円錐状の花穂】
(10月17日幸手市北1丁目地内にて撮影)
 
※クリックすると大きな画像がご覧になれます
【セイタカアワダチソウ】
(10月15日幸手市大字権現堂地内休耕地にて撮影)
一株で数万粒の種子をつくるとともに、地下茎による栄養繁殖、さらに有害物質を出して他の植物の発芽や生育を抑える(アレロパシー)働きなどによって急激にふえ続けます。花粉は虫媒花なので風ではあまり飛びません。有名な害草ですが、養蜂業者の密源のほか、茎は天井をはったり、簾をつくるなど工芸材料としても利用されるようになりました。
 
《マメアサガオ》
マメアサガオ(ヒルガオ科)は北アメリカ原産の1年草です。昭和30年に東京近郊での帰化が報告され、現在では関東地方以西で道ばたなどにやや普通に見られます。幸手市内では、「幸手市史自然環境編U」作成のため調査時点で確認されました。ここ数年急激に分布を広げ、道沿いのフェンスに巻き付いているのによく出会います。
※クリックすると大きな画像がご覧になれます
クリック
【フェンスに巻き付いているマメアサガオ】
(10月15日倉松川右岸(東1丁目地内)にて撮影)
   
 全体はほぼ無毛で茎はつるとなり、よく枝分かれして他物に巻き付き長さ数メートルになります。
 葉は先の尖った長卵型から心臓型で、互生します。夏から秋にかけて葉腋に花茎をだし花をつけます。
※クリックすると大きな画像がご覧になれます
クリック
【マメアサガオの実】
(10月15日倉松川右岸(東1丁目地内)にて撮影)
クリック
【マメアサガオの花】
(10月15日倉松川右岸(東1丁目地内)にて撮影)
   
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり」という正岡子規の句は余りにも有名です。今年も赤とんぼの舞う秋になりました。一般に体の赤いとんぼを「赤とんぼ」といいますが、今回はアカネ属のナツアカネ(夏茜)を紹介します。
※クリックすると大きな画像がご覧になれます
【ナツアカネ♂】
(10月6日権現堂地内にて撮影)
【アキアカネ♀】
(10月15日権現堂休耕地にて撮影)
 
ナツアカネの幼虫(ヤゴ)は池や湿地、溝、水田などに生息し、6月中旬に羽化、夏の間は羽化水域からあまりとおくない木立などにぶんさんして生活し、アキアカネのように集団で移動しません。秋の気配が濃くなると、♂は複眼をふくめて体全体が赤くなり、♀も腹部背面の大半が赤化します。この時期、幸手市域で普通にみられるアカネ属のトンボはアキアカネ、ナツアカネ、ノシメトンボ、場所によってはマイコアカネもみられます。
 
前へ
前へ
トップページへ
 
タウンナビ幸手・久喜は有限会社サポート・ユウが運営しています。
Copyright (c) 2002. Support YOU Corporation. All rights reserved.