トンボ・野草研究家の長須房次郎さんが幸手近郊の自然を紹介

写真/文
長須 房次郎
>>プロフィール

>>バックナンバー

No.28 -7月19日更新-
〜 夏の風物詩 ハグロトンボ 〜
※写真をクリックすると大きな画像がご覧になれます
クリック
【ハグロトンボ♂ 高須賀池付近にて 7/10撮影】

オハグロトンボで親しまれているハグロトンボが今年も市内で見られる季節がやってきました。
 ハグロトンボは、かつては埼玉県東部低地の利根川や中川水系のいたるところで群れをなし、夏の風物詩ともなっていました。しかし、ヤゴ(トンボの幼虫)の生活する川や用水が生活雑排水で汚れ、農薬散布の影響もあり、東部地域では姿を見かけなくなりました。
 その後、自然保護運動が活発になったり、農薬の空中散布見直しなどが効果をあげたためか、平成6年には15年振りに幸手市内で生息が確認されました。その後、毎年増え続け、ここ数年市内で見られるようになりました。
   
 ハグロトンボは、平地や丘陵地の水生植物が繁茂するゆるやかな流れで生活しています。
 未熟な固体は、羽化水域からやや離れた林地に入って、木もれ日がさしこむような林の中でしばらく生活します。今回撮影したのも、高須賀池の近くの林の下でした。
 体色は全身が光沢の強い金緑色で、♂では青みが強く♀ではやや黄色味がかっています。薄暗い中で細い腹だけが金緑色に光る真っ黒な姿から、ゴクラクトンボ、ホトケトンボ、カミサマトンボ、メクラトンボなどとも呼ばれます。
 既婚婦人が歯を黒く染めた「お歯黒」に似ているので、古くはオハグロトンボと呼んでいました。
クリック
【ハグロトンボ♀ 高須賀池付近にて 7/10撮影】
   

今回紹介した高須賀池公園の周囲には、ハグロトンボの他にもアジアイトトンボ、コシアキトンボ、コフキトンボ、ショウジョウトンボ、シオカラトンボ、オオヤマトンボ、ウスバキトンボなどのトンボが観察できます。
※写真をクリックすると大きな画像がご覧になれます
クリック
【アジアイトトンボ 上が♂下が♀(交尾している)】
高須賀池にて 6/30撮影

日本では北から南まで分布が広く、最も普通なイトトンボで、市内各地で見られます。♂の第9腹節が青いのでアオモンイトトンボと区別出来ます。♀は♂と全く異なる異色型で、未熟なうちは地色が橙赤色をしています。
   
クリック
【コシアキトンボ♂】 高須賀池にて 6/30撮影

和名は腰明きトンボの意。腰の部分に黄白色の斑紋があることから名づけられました。
   
クリック
【コフキトンボ♀】  高須賀池にて 6/30撮影

ミヤマアカネに似ているが、コフキトンボの♀の異色型でオビトンボと呼ばれる珍しいトンボです。なぜ、この型がでるのかよく分かっていません。
   
クリック
【コフキトンボとコシアキトンボ】
高須賀池にて 6/30撮影

左下はコフキトンボ、シオカラトンボに似ているが小さい。成熟すると蒼白色の粉が吹き出るのでこの名があります。右上はコシアキトンボです。
   
クリック
【シオカラトンボ♂】 高須賀池にて 6/30撮影

日本産トンボで最も普通に見られる中型のトンボ。体色は未熟なうちは♂♀でほとんど差がない。ムギワラトンボはシオカラトンボ♀の別称です。
   
クリック
【ウスバキトンボ】
幸手市内市街地にて 7/6撮影

名前は、薄い翅をした黄色いトンボの意。お盆の頃に最も多く姿をあらわすことから、昔の人はセイレイ(精霊)トンボとか、ショウリョウトンボ、ボン(盆)トンボ、ホトケトンボなどと呼びました。「ご先祖様の霊がトンボに乗って盂蘭盆会に里帰りされた」とトンボを大切に迎え、捕ったり、いじめたりすることを戒めました。
 幼虫は琉球から北では越冬が確認されていません。毎年南方から飛来して繁殖を繰り返しています。
   
前へ
トップページへ
 
 
 
タウンナビ幸手・久喜は有限会社サポート・ユウが運営しています。
Copyright (c) 2002. Support YOU Corporation. All rights reserved.