トンボ・野草研究家の長須房次郎さんが幸手近郊の自然を紹介

No.53 -9月7日更新-
水路にミズオオバコの花
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 埼玉県レッドデータブック植物編で、絶滅危惧種U類にリストアップされているミズオオバコが、幸手市内の水田地帯を流れる水路で花を咲かせているのを確認しました。
 ズオオバコ(トチガミ科)は、水中にオオバコのような葉を広げて育つ一年生の沈水植物。植物体は水の深さで大きさが変化します。今回、確認された場所では葉の大きさが30cm前後のものがありました。花の大きさは3〜4cmで、花の色は白から淡い桃色をしています。
 水中の葉がオオバコの葉に似ているので、ミズオオバコと名付けられました。
また、水面上で咲く花の形がアサガオににているのでミズアサガオとも呼ばれています。
私が50年ほど前に調査した時には水田や農業用水路で見られましたが、除草剤が使われるようになってからは激減し、今では絶滅が心配されるほど少なくなってしまいました。
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水面に花を咲かせているミズオオバコ
幸手市権現堂地内水路にて 8月28日撮影
 
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ミズオオバコが生育している水路
幸手市権現堂地内にて 8月28日撮影
 今回、ミズオオバコの生育が確認された水路の写真です。ミズオオバコがどんな環境に生育しているかお分かりいただけると思います。ここにはタニシもたくさんいたので、水質が良くなっているのが分かります。もう少し良くなれば蛍も帰ってくるのでは・・・そうなればいいですね。
   
 朝日新聞埼玉県版(8月23日付)に掲載された「ミズオオバコ」幸手の水路に花 の記事を読まれた方から「家の近くにもありますが・・・」という電話を頂きました。
 8月25日、幸手市木立にお住まいの相良浅子さんに案内していただき現地を調査したところありました!まさしくミズオオバコでした。場所は権現堂と同じような水田地帯でした。お話を聞くと木立の水路には「昨年もたくさん咲いていた」とのことで、まだ他の地域にもあるのではと思いました。この水路にはタニシも小さい魚も、そして最近少なくなってきたシオカラトンボもたくさん見られました。
   
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ミズオオバコの葉  8月20日権現堂地内で採集、
押し葉にしたものを8月31日撮影
 左の写真は8月20日権現堂地内の採集したミズオオバコの葉を「押し葉」したものです。葉は本来緑色ですが現地で観察すると泥で汚れているのでよく分かりません。数日前の雷雨で増水して泥をかぶってしまったためです。
 権現堂地内の水路に咲いていたミズオオバコを切り取って撮影したものです。淡い桃色をしている3枚の花弁の下方に筒型の苞(包)があります。苞は包葉ともいい、花や花序の舌につく葉のことで、普通の葉に比べて小さく、時に麟片状になることもあります。苞の小さい種子が出来、熟すと種子を水中に撒き散らします。花期は8〜10月です。
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ミズオオバコの花
権現堂地内の水路に咲いていた花
 8月22日撮影
   

   
水辺の植物
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 残暑が厳しかった8月中・下旬、水辺の観察を続けていた時、たまたまミズオオバコの群生地に出合いました。ここではそのとき出合った植物の中から紹介します。
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ヒメシロアサザ
幸手市吉野地内の水田にて 8月16日撮影
 ヒヒメシロアサザの分布領域は本州から沖縄まで池沼や水路、水田などに生育する。しかし、生育地は点々と散らばっており珍しい植物。県レッドデータブックで絶滅危惧TA類にあげられている貴重な種。
   
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アメリカアゼナ
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アゼナ
 アメリカアゼナはアメリカ原産の帰化植物。アゼナは在来種。どちらも水田雑草。最近はアメリカアゼナが多くなっている。
幸手市吉野地内の水田にて 8月16日撮影
 
   
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ジュズダマ
蓮田市黒浜上沼周辺にて 8月19日撮影
  原産は熱帯アジアと言われる本種は県内では、台地・低地の水辺に群生するイネ科の多年草。数珠玉を入れてお手玉を作ったり、首飾りなどの装飾品を作る。 花期は7〜9月。数珠玉の玉は、果実ではなく苞葉が硬くなったもので苞鞘(鞘状苞)ともいう。
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オモダカ
蓮田市黒浜上沼周辺にて 8月19日撮影
 葉の形が家紋や鎧の縅に用いられて有名なオモダカ。湖沼の水辺や用水路、水田などに生えるが除草剤のため減少している。花は花茎に上方に雄花が、下方に雌花が3個づつつく。慈姑はオモダカを改良したもので埼玉県は有数の産地となっている。
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クズの花
蓮田市黒浜上沼周辺にて 8月19日撮影
 秋の七草のひとつとして万葉の昔から親しまれてきた植物。茎はつる状になって10m以上にもなる。葉は睡眠運動が盛んで夜は垂れて裏面を合わせて眠る(クズの昼寝)。花は天ぷらにして食べられる。根から葛粉をとる。葛根湯にも。
   
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ホテイアオイ
蓮田市黒浜上沼周辺にて 8月19日撮影
 南米産の多年生水草。日本には1880年代(明治中期)に観賞用、家畜飼料として入り、関東、北陸以西の各地に繁殖。水質浄化の働きもあるミズアオイ科の植物。特定外来生物法の「要注意外来生物」に指定されている。花期は6〜10月。冬は枯れる。
   
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ヒシに産卵するギンヤンマ
蓮田市黒浜上沼周辺にて 8月19日撮影
 黒浜上沼から流れ出している水路のヒシに、ギンヤンマが産卵している。トンボの産卵は種類によって異なるが、ギンヤンマは時には雌単独で産卵する事があるが雌雄連結したまま産卵する事が多い。
   
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ホシクサ
杉戸町内にて 8月30日撮影
 ホシクサは沼や水田などに生える一年草。かつて古利根と呼んでいた現在の行幸湖には群生していたが、現在幸手市内では確認できない。県のレッドデータブックでは絶滅危惧種TB類に指定されている貴重種。花期は8〜10月。
   
   
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