ダイオキシン問題は解決するか?
エコ・リサイクル連絡会副会長 土淵 昭 
 
焼却炉の排ガス中のダイオキシン類の規制値

 今から5〜6年前、ダイオキシン問題が大問題になってから、国をあげての取り組みが行なわれ、法律の制定・強化により、それまで野放しだった焼却炉の排ガス中のダイオキシン類が、暫定的に80ngTEQとなり、来年の平成14年12月より、焼却能力が1時間あたり200kg〜2000kg未満のものは5ngTEQ以下、同じく2000kg〜4000kg未満のものは1ng以下、4000kg以上のものは01ng以下となります。
 この規制により、厚生省(旧)はダイオキシン類の排出量を今までの99%以上減らすことが出来る、としています。
 
県や自治体の取り組み

 県や自治体、特に通称「くぬぎ山」周辺の所沢、狭山、川越の各市と光芳町は、たくさんあった産業廃棄物の焼却問題に真剣に取り組み、産廃業者は廃業するか、今まで燃やしていた建築廃材をリサイクルする方向で転換するなど焼却炉の数も半分になりました。
 また、自治体の焼却炉から出るダイオキシン類もずいぶんと少なくなってまいりました。
 
これでダイオキシン問題は解決するか

 さて、平成14年12月以降の規制値が確実に守られたとして、これでダイオキシン問題は解決するでしょうか。
 
1)ダイオキシン類の摂取許容量

  国が決めたダイオキシン類の摂取許容量は、4pgTEQ/kg・1日となっています。
世界保健機構wHOの勧告値は1〜4pgTEQ/kg・日となっており、欧米の国によっては1pgを採用しているところもあるようですが、わが国では勧告値の上限4pgを採用しました。今のところ日本人の摂取量は平均3pgくらいで、許容値未満だから安全だそうです。
 
(2)排ガス中のダイオキシン発生量はどのくらい

  排ガス中のダイオキシンの発生量の規制値は、濃度を規制しているので、総量を規制しているわけではありません。
 例えば、人口10万の都市があるとして、ごみの焼却量が1日70tとすると、そのときに排出される排ガス量は約60万Nm3にもなりますから、もし1ngTEQ/Nm3のダイオキシン類が発生するとすると、その総量は60万ngになります。60万ngはpgに直すと6億pgになります。この量を人口10万人で割ると、一人1日当たり6千pgになります。
 国が決めた摂取許容量は4pgTEQ/kgですから、赤ん坊から大人までの平均体重を50kgとすると、摂取許容量は200pg/日・人です。従って先ほどの排ガス中のダイオキシン量で地上に落ちてくるまでには数万倍に薄まるので、直接人体に影響はありません。
 しかし、絶対量としてそれだけ発生しているのですから、それはやがて雨とともに地上に落ち、川から海へと流れ込みます。日本人の体に入るダイオキシンの摂取経路の65%は魚から、といわれています。ですからこのままでは永久にダイオキシンの量が減ることはありません。やはりごみを燃やさないようにすることが大切です。
※pg=1兆分の1g
※ng=10億分の1g
 
 
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